2010年4月1日

 

 2010年3月14日から3月31日にかけて、大エジプト博物館保存修復センター(GEM-CC)で働く保存修復師と文化財データベースの整備をすすめている本プロジェクトのADDスタッフを対象に、文化財の写真記録の方法(Photographic Documentation)を学ぶワークショップを開催しました。

写真は、インベントリーの作成や調査、展示解説、保存修復記録などに使われ、博物館活動にとってなくてはならないものです。そこで今回、日本から保存修復専門の青木さん(サイバー大学)と文化財撮影専門のカメラマンの杉本さん(西大寺フォト)を講師に迎えて、写真撮影の理論と実習を行いました。

まず、最初の2週間は保存修復師13名が参加し、画素数や解像度などカメラの機能、絞りやシャッタースピード、被写界深度など写真が写る仕組み、ホワイトバランスなどの色の調整などの理論を学びました。その後の実習では、特に構図や光のあて方など文化財撮影に必要な撮影方法を学びました。例えば、立体的な文化財を撮影する際には、その影を消すためにスタンドライトに薄紙をかぶせる、ガラス板に文化財をおいて上から撮影するときに、ストロボの光がガラスに反射しないようにするために板の下から光を当てるといった方法です。最後に、参加者それぞれデジタルカメラで撮影した画像をコンピューター上で現像し、画像処理ソフトを使って修正加工する方法を学びました。

参加した保存修復師たちの多くは、保存修復センターの各ラボの部長で、石や木材、染織品などそれぞれの専門に応じた撮影の仕方を質問するなど、熱心に講義を受けていました。今回のワークショップで、これまで仕事上、身につけた写真の知識と技術が体系化されたことが大きな成果となりました。

保存修復センターで行われたワークショップのオープニングでは石川大使からスピーチをいただきました。また、在エジプト日本大使館の協力を得て、ワークショップの様子も大きく報道されました。その他、文化省の映像撮影班もワークショップの様子を撮影に来るなど、いつものワークショップより活気のあるものとなりました。

最後の4日間は本プロジェクトのADDスタッフ6名が参加しました。すでにADDスタッフは普段の収蔵庫内での作業で文化財の撮影を行ってきたので、講義はデジタルカメラの基本的理論を学習後、これまでの撮影方法の改善策を指導する形で進められました。ワークショップ後には、三脚の使い方、ライトの使い方、カラースケールの使い方などが変わり、写真の質が格段に向上しました。エジプト考古学博物館の記録部門からも質の高さを認められ、ADDスタッフが撮影した写真をエジプト考古学博物館に提供することになりました。(真由美・松田)