現在、GEM用の保存修復作業をするために、保存修復家が20数名雇われています。本プロジェクトでは、独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所と協力して、これらの保存修復家を対象に、紙や染織品など素材ごとの研修プログラムを日本とエジプトで実施しています。
エジプトでの研修
各分野の第一人者を講師として招き、理論と実践を組み合わせた5日間程度のワークショップを行っています。
期間 | テーマ | 講師 | 参加者数 |
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2008年2月24日~28日 | 紙 | 紙修復家 坂本雅美氏 | 20数名 |
2008年7月27日~31日 | 染織品 | 染織品修復家 石井美恵氏、深津裕子氏 | 22名 |
2009年3月1日~5日 | 金属 | 金属修復家 Dr. Stavroula GOLFOMITSOU | 25名 |
染織品保存修復ワークショップ
染織品保存修復ワークショップは22名の参加者を得て、講義と実習の両面から進められました。実習では染織物を修復する際に知っておかなければならない繊維の性質を理解するために実際に染色を行ったり、遺物の実物を使ってコンディション・レポートを作成するなどしました。研修内容はこの分野の最新の教育内容を取り入れたもので、参加者から高い評価を得ました。
その一方、保存修復センター完成前であったため、ワークショップは会議室等を利用せざるを得ず、実際の遺物を利用した保存修復指導はできませんでした。参加者からはさらに実践的な研修を希望する声が聞かれました。また、参加した保存修復家の技術レベルや専門分野が異なることから22名の参加者すべてのニーズにあった研修を実施するのは難しいことがわかりました。
金属保存修復ワークショップ
染織品保存修復ワークショップでの経験を踏まえて、金属保存修復ワークショップはカイロ考古学博物館の地下で開催しました。これによって、館外に持ち出しが困難な実際の遺物を利用した指導がある程度、可能になりました。例えば、カイロ考古学博物館の展示室にある遺物を見ながら腐食状況を記録する方法を学んだり、実際に数点の遺物を手にしながら遺物の状態や過去に受けたダメージ、保存修復の跡などを記録する訓練をしました。本プロジェクトの技術移転では有能な海外の専門家を含めて実施することとなっています。今回は最初の試みとして金属保存修復で実績のある ギリシャ人を講師として招いて行われました。今後、石材や文化財の移送・梱包の研修を予定しています。
日本での研修
保存修復センターの開館が遅れている中でより専門的で実践的な指導を行うために、2009年度からはエジプトでの研修に加え、日本での研修も実施することにしました。帰国後にはエジプトで帰国報告会を開催する予定です。
期間 | テーマ | 実施団体 | 参加者数 |
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2009年7月8日~9月2日 | 染織品(上級) | 東京文化財研究所 | 2名 |
2009年8月26日~9月18日 | 保存修復(分析機器) | 東京文化財研究所 | 2名 |
2009年10月1日~8日 | 文化財移送・梱包 | 日本通運(株)・ 東京文化財研究所 | 5名 |
保存修復技術の専門家チーム派遣
エジプトでは短期のワークショップに加えて、保存修復分野の長期専門家による協力も予定していますが、保存修復の分野は素材によって専門がわかれているため、エジプトですべての分野を指導できる人材はいない状況です。今後は専門家チームを組んで本格協力に向けたトレーニング計画を策定する予定です。