2011年4月1日

ツタンカーメンの胸飾りの記録をとるADDスタッフ

本プロジェクトでは、大エジプト博物館(GEM:the Grand Egyptian Museum)設立支援の一環として、同博物館に収蔵される予定の文化財のデータベースを再構築する作業をしています。具体的には、各地の収蔵庫や博物館へ出向き、GEM用に選定された文化財の場所や大きさ、重さなどのデータと実物を照合し、写真を取り直すという作業をしています。このような文化財の基本情報は、文化財をGEMに移送したり、展示計画を立てる際になくてはならない情報なのです。

エジプト文化省(当時)下に設置された、大エジプト博物館設立準備のための考古学ユニットが数年かけて、GEM用の文化財のデータベースを作成してきましたが、場所や大きさ、写真などのデータに誤りがあることがわかりました。そこで、JICAでは2008年8月から、エジプト学を専攻したエジプトの若者を新たに雇って、考古学データベース部(ADD:Archeological Database Department) というチームを組織し、日本人IT専門家の監督の下、データベースを再構築する作業を開始しました。現在、ADDには16名のエジプト人スタッフが働いています。

設立以来2010年3月までに、ADDはサッカラ、ギザ、マンスーラなどのエジプト各地の収蔵庫にある約1万点の文化財について確認作業をしてきました。2010年4月からはカイロ考古学博物館での作業を開始しています。その後、エジプト政府は2012年に大エジプト博物館のソフト・オープニングを行い、その際に12500点を展示することを決定しました。そのうち、ツタンカーメンの遺物を含めた約10000万点がカイロ考古学博物館から移送されることになりました。そこで、ADDのチームは、12500点の確認作業を終えることを新たな目標として設定しました。2011年1月中旬の時点で、すでに約5000点の確認作業を終えました。

計測作業中のADDスタッフ

ADDは2010年12月より、カイロ考古学博物館の2階に展示されているツタンカーメンの遺物の確認作業を始めました。ツタンカーメンの遺物に関われることはエジプト学を専攻したスタッフにとっての夢であり、とても誇りに感じています。2011年1月12日から、いよいよツタンカーメンの黄金のマスクがある展示室の文化財の確認作業が始まりました。確認作業はカイロ考古学博物館の学芸員との共同作業です。警備員が見守る中、展示ケースから学芸員がツタンカーメンの遺物を一点一点、取り出し、ADDのメンバーが大きさや重さをはかり、写真を取り直すという作業をしています。

2011年1月19日、いよいよツタンカーメンの黄金のマスクの展示ケースが開けられ、マスクの確認作業が行われました。マスクの大きさや重さはすでに別の機会に測られているため、この日は写真撮影だけが行われました。この日は水曜日で、博物館は午後は休館となっているため、観光客はいませんでしたが、多くの現地のテレビ局や新聞社が取材に訪れ、歴史的な瞬間が撮影されました。誰もが展示ケースから取り出されたツタンカーメンの黄金のマスクの美しさに興奮し、見入っていました。ツタンカーメンコレクションの作業は、エジプト博物館があるタハリール広場を中心に起こったエジプトでの民主化運動をはさんで、3月に無事終了しました。