
11月1日から9日まで大エジプト博物館保存修復センターにて無機物研修II (非金属資料の保存修復)を実施するにあたり、日本から以下の5名の講師を招聘しました。
及川崇 :保存修復専門家
阿部善也:東京理科大学 助教
小林芳妃:保存修復専門家
古賀路子:保存修復専門家
島津美子:国立歴史民俗博物館 助教
本研修では、単に修復技術を移転するだけではなく、ドキュメンテーションと状態調査、保存修復方針の決定、保存科学との協力体制、調査・修復報告書の作成といった保存修復活動全体に関わる人的・物理的システムの構築を目標としました。
まず、無機物ラボスタッフによる活動報告及び問題点の報告により、ポッタリー、ファイアンス、ガラスの保存修復における問題についての理解と、過去に使用された修復材料の除去に関する情報を得ました。その後、島津講師にポリマー及び溶剤についての講義を頂き、過去修復材料の除去クリーニングに必要な科学的根拠の理解を促しました。また及川講師によるクリーニングマテリアルの紹介と実習により、クリーニング法の選択肢拡充を図りました。
適切な保存修復計画の策定のためには、遺物の材質と保存状態の把握が必要です。そのために、阿部講師によるポッタリー、ファイアンス、ガラスの材料に関する講義及び劣化メカニズムの理解を目的とした講義を行いました。さらに各種観察(顕微鏡、XRF、XRD)実習により、各遺物の材質・劣化メカニズムの理解が深まりました。
ポッタリー、ファイアンス、ガラスといった特性の異なる材質について、小林講師と古賀講師による各種接着剤を用いた接着実習を実施し、科学的根拠に基づいた理解を深めた他、使用時の感触と効果を体験し、各遺物の状態や目的に応じた接着法・充填法の選択をするための科学的根拠と経験を蓄積しました。
終いに本研修は3連続研修の最後となりますが、とても充実した研修だったと研修生から好評でした。




