
GEM-JCプロジェクトが対象とする遺物には、7組の壁画(1組のリード遺物と6組のフォロー遺物)が含まれています。
リード遺物は、GEM-CCと日本人修復家が協力して作業する予定で、GEM-CCの修復家がフォロー遺物に対する保存修復作業を行う際に手本とするものです。フォロー遺物は、GEM-CCの修復家が保存修復処置をするもので、日本人修復家は必要時に技術的な支援を行う予定です。
イニ・スネフェル・イシュテフの壁画はもともと、ダハシュールにある彼のマスタバ墓の泥レンガ壁の表面に漆喰の基層を塗りその上に描かれていました。
しかし、19世紀に壁表面が剥ぎ取られ、カイロのエジプト考古学博物館に移され、壁に固定された木製の展示ケースの中に入れられて展示されました。これらの壁画は別々の展示ケースに分割して入れられたため、全体像を理解することが難しく、またそれゆえにその価値と意義が損なわれています。
さらに、塩類の白華現象のような表面堆積物もみられ、適切な分析と保存修復処置をすることになります。
加えて、イニ・スネフェル・イシュテフの墓とスネフェル王の石灰岩レリーフの場面を元の壁画構成に従って配置し、理解しやすいように物語を形作るよう一緒に展示することが提案されています。