2009年12月29日

保存修復師による帰国報告会が3回にわたって開催されました

 

保存修復師育成活動の一環として、本年度は大エジプト博物館保存修復センター(GEM-CC)で働く予定の保存修復師を日本に送り、3回の研修を行いました。各研修は上野にある東京文化財研究所が中心となって実施しました。1回目は2009年7月から2カ月間にわたり開催された染織品保存修復上級研修、2回目は2009年8月から9月にかけて3週間開催された保存修復分析機器研修、3回目は2009年9月か10月にかけて2週間にわたって行われた文化財移送梱包研修です。10月には各研修参加者の帰国報告会を開催しました。

10月1日に開催された染織品研修帰国報告会では、研修に参加したべニース・イブラヒムさんとダリア・アリーさんに研修内容や滞在生活を1時間にわたり発表してもらい、GEM保存修復部門の責任者.ナディア博士を初めとする本プロジェクト関係者、考古庁(SCA)所属の保存修復師のほか、日本のマスコミ関係者の方を合わせて約50名が参加しました。質疑応答では、研修で学んだことのうち、どれくらいエジプトでも実施できそうかとの質問に対して、80%ぐらいはエジプトで実施できるのではないかとの答えがあり、その例として染織品に使われている色の変化が知るための簡単な装置が紹介されました。

続いて、文化財分析機器研修の帰国報告会が10月22日に開かれました。同研修にはサルワト・ムハマッドさんとディーナ・ムハマッドさんが参加しましたが、報告会ではディーナさんが報告を行いました。研修では、各機材について一通りの説明があり、大変勉強になった、次回は実際に機材を使う研修に参加できればと抱負が述べられました。今回の発表では、研修内容に加えて、日本での異文化体験の様子が語られました。例えば、日本人の働き方について、優れた技術のみならず、皆で協力して働いている点が素晴らしいと指摘されました。

2009年10月29日、文化財移送/梱包研修を受けた7人の保存修復師による帰国報告会が開かれました。7人の代表としてサミ・ギルギス氏が研修の様子をビデオも含めて詳細に発表しました。研修に参加した7人はプロジェクトの文化財データベース部(ADD)と協力して、様々な収蔵庫で大エジプト博物館に移動する遺物を梱包・保管する作業を行ってきており、今回の研修はタイミングのよいものだったとの報告がありました。特に、貨物追跡システムや在庫管理などの理論的な研修が非常に役に立ったとのことです。参加者は2週間の研修期間にもかかわらず、「万が一」などの日本語を覚え、より注意深い移送を心掛ける姿勢を学んできたようです。(了)

第1回目報告会の様子(べニースさんの報告【左】、ダリアさんの報告【右】)

第2回報告会の様子(あいさつをする中村リーダー 【左】、ディーナさんの発表)

第3回報告会の様子(サミさんの発表【左】、質疑応答の様子【右】)