カイロ日本人学校の小学5、6年生と中学生10名を対象に、大エジプト博物館(GEM)建設予定地と大エジプト博物館保存修復センター(GEM-CC)の見学ツアーを実施しました。
エジプトの文化遺産を保存修復するセンターで、間近でミイラや棺、彫像を保存修復する活動を見学してもらい、彼らが住んでいるエジプトの歴史、文化遺産の保存の大切さについて考えてもらい、国際理解教育に貢献していくことを目的にしています。
また、日本人の子どもたちに、日本人専門家が活躍する国際協力の現場を見学してもらい、国際協力への理解、また将来のキャリア教育につなげてもらうための企画です。
当日の見学ツアーでは、まず2012年3月11日に建設工事が開始されたGEMの建設予定地を訪れました。着々と進む工事現場ですが、まだ博物館の「かたち」を想像することは難しいので、完成予想図を使いながら、どのような博物館ができるのか、日本の支援がどのように役立っているのかを見てもらいました(写真1)。建設予定地には、2006年にラムセス中央駅から移送され、博物館入口に展示される予定の高さ11メートル、重さ35トンのラムセス2世像が博物館開館を待っています。日本人学校の児童・生徒さんたちはまじかに見る石像の迫力に驚いたり、古代エジプト文字で書かれた文字を背中に発見したりしました。
GEM-CCでは、本プロジェクトの松田専門家から、プロジェクトの「人材育成」について説明があり、伏屋専門家からは、見学予定の古代エジプトの文化財についての話がありました。その後、ADDのオフィスに移動し、文化財のデータベースがどのように作成されているかを写真を通じて作業の様子を見学しました(写真2)。
2.ADDの活動について、エジプト人マネジャーが紹介しました
保存修復ラボでは、ミイララボ、木製文化財ラボ、無機物文化財ラボを見学しました。今回のツアーでは、古代エジプト人の来世観がつくりだしたミイラ、彩色木棺、彩色カルトナージュ、陶器棺、副葬品などを見学しながら、エジプト人保存修復家から、ミイラの作り方、「死者の書」、古代エジプトの神々について説明をうけました(写真3、4、5)。
またミイラや有機物の文化財、石製文化財の損傷の原因となる微生物を研究するラボも見学しました。色々なカビの種類があること、どのように培養したり研究したりしているのかを学んでもらいました。日常生活でも身近な「カビ」が、文化財の保存に関係していることは驚きだったようです。
子供たちは初めて間近にみる古代エジプトの文化財に興味津々だったようすで、終始、熱心に話を聴きながらメモをとり、たくさんの質問があがりました。質問に答えたエジプト人専門家に『彼女は将来考古学者になるね!』と言わせるほど、鋭い質問も多く、文化財やその保存、文化財に携わる様々な専門家について、学ぶよい機会となったようです。
見学に訪れた子供たちや引率の先生方からは、文化財や考古学というと社会の授業だけが関連すると考えていたが、今回の見学を通じて、理科も重要だとわかったという声が多くありました。現代の保存修復は科学の支援を抜きには考えられません。GEM-CCにも 科学ラポがあり、いろいろな研究を通じて保存修復に協力しています。
今年度、本プロジェクトでは「保存科学」についての研修を3回連続で実施し、最先端の科学研究を用いた保存修復について、人材育成を行っていきます。
国際理解教育や国際協力については、JICAの子 ども向けサイトご覧ください。